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ILAカンファレンス2004
講演「人的インフラとしてのIT技術者」

北海道総合通信網株式会社 株)取締役技術部長 畠山 樹代実 氏

HOTネット

北海道総合通信網株式会社=HOTネットは平成元年に設立された北海道電力の子会社です。北海道から沖縄までの電力会社が、通信事業の子会社を持っています。売上は年間約110億円。インフラは中継バックボーンからアクセスインフラまで全て自前で構築しています。NTT以外の事業者で顧客の家の中まで日本全国すべて結べるのは電力系の通信事業者だけです。設立当初はアナログの専用線から始まりましたが、その後、デジタルに移行しました。

サービスの主流は、今のところ高速デジタル専用線ですが、回線使用が大きく伸びているのが広域Ethernetサービスです。平成10年からはプロバイダ事業も展開しています。また、札幌近郊の長沼町のFTTHサービスに取り組んだりもしています。

光ネットワーク

札幌を中心として、北は稚内、南は函館、東は根室までを光ファイバー網を構築しています。主なルートはOPGWです。送電線の一番上のグランドワイヤー(避雷用の電線)の中に挿入したパイプに光ファイバーを入れています。電柱で中継している配電線に添架すると、交通事故などで切られてしまうことがよくありますが、送電線だと50mくらいの高さがあるので心配ありません。どこの会社でも送電線をうまく使って光の回線を構築しています。

しかし、それだけだと1ルートしかできないので、万が一に備え第2のルートを用意しています。配電線を使ったり、国土交通省やNTTの光ファイバーを借りたりしています。

ほくでんグループの情報通信関係要員

HOTネットの社員は派遣も含め約200人でうち90人強が技術者です。HOTネットの200人に加え、ほくでんグループには、ほくでん情報テクノロジー、北海電気工事(情報通信部)、北海道電力(情報通信部)があり、情報通信関係要員が1000人ほどになります。

L2L 顧客の求めるサービスに対応する

広域EthernetサービスをHOTネットではL2Lと称しています。「赤レンガギガネット」と名づけてもらっている北海道庁本庁舎には 1Gbpsの回線を引き込んでいます。残りの13支庁舎は100Mbpsですが、将来的には100Mのところを1Gまで、本庁は10Gまで増殖できます。庁内の電子化と庁内LANを主流に使っています。庁舎内にキヨスク端末を置いて北海道のさまざまな情報が検索できます。また、各支庁間のテレビ会議などにも使っていると聞いています。

L2L回線はサービスを開始した平成12年度には11回線でしたが、昨年の実績で1000回線を突破し、今年は1年で1000回線の契約を予測しています。専用線サービスよりは格安だということで企業に使っていただいていますが、今後もIP系の通信サービスにシフトしていくと思われます。技術者もますます必要になっていきます。

トータルソリューションの要望に応える付加サービス

MSP(マネージドサービスプロバイダ)に期待

回線だけを売っていても通信事業者として生き残れませんので、付加的なサービスとしてどのようなことができるかが重要です。顧客はトータルソリューションを求めている場合が多いので、回線を売りに行っても、コンピュータシステムを含めセットで請け負って欲しいというケースは多いのです。その場合、自社だけではできないことでも、グループ会社の協力を得て、サービスを提供しています。付加サービスには、映像のストリーミング配信などのコンテンツ配信、ダイレクトメール配信などのほか、顧客のLANシステムの監視やセキュリティ関係のサービスを提供します。今後伸びが期待できるのが、MSP(マネージドサービスプロバイダ)で、顧客のシステムをすべてメンテナンスするというサービスです。情報通信技術者のいない企業のシステムをセキュリティを含めすべてサポートします。

新技術 MPLSによる次世代インフラ整備

さまざまな新技術開発にも取り組んでいます。最適ルートを常に選定してIP伝送ができるMPLS(マルチプロットラベルスイッチ)というルータを使った次世代の通信ネットワークのインフラ整備や、光レベルでルーティングできるというG-MPLSという最新技術にも取り組んでいます。

セキュリティではISMS(インフォメーションセキュリティマネージドシステム)を取得しました。社内の情報の扱いについて運用を厳格に求めています。会社や特定施設への立ち入りを制限、顧客情報を扱う社員に対する教育と適正審査、不正アクセス防止のためファイヤーウォールなど技術的な整備、施策、人的教育、技術、運用などあらゆる面でセキュリティ対策に取り組んでいます。

求められる技術

求められる技術は多様です。デジタル通信の基本中の基本である同期網技術、一世代前のATM関係技術、一番ホットなところではIP(いわゆる Ethernet)やMPLSの技術などです。光ファイバーの技術開発にも取り組んできましたが、光ファイバーとアンプの性能がよくなって、昔なら30キロが限度だったのが70キロぐらいを中継装置なしで長距離伝送ができるようになり、コストダウンできています。

電柱にケーブルを張っていく線路添架技術は古い技術ですが、顧客の家に配線を引き込むには、たとえ無線LANを使うにしても、最終中継地点まで光ファイバーで送信するため必要不可欠な技術です。電線は張り巡らされていますから、線と線の間隔を何㌢にするかとか、電柱にトランスが載っていると光ファイバーを架線する場所がないので電柱を取替えたり、電柱に継ぎ足しをつけたりとか、IPとはかけ離れていますが、そういう技術も必要です。

教育システム

HOTネットは小さな会社ですが、IP化IT化に進む中、新技術導入のために研修は不可欠です。が、新入社員教育については、採用人員が毎年変わりますし、技術の範囲が多岐にわたる上、最新技術は日進月歩ですから体系化が困難です。そのため、専門技術習得の近道として社外研修を多用しているのが現状です。養成費はここ3年間で5千万円、3千万円、2千万円弱とかなりつぎ込んでいます。悩みの種は、100人の技術者が新技術を学んだとしても、現場に活かせない人もいるので、結局使わないうちに忘れてしまうというケースが多いことです。IP系の基礎は技術者100人全員に受講させました。

観点は異なりますが自己啓発制度もあって、仕事以外の技術的なことを勉強する意欲のある社員には、2万円~最高20万円までの補助金制度があります。が、活用者は少ないのが現状です。教育が専門化しすぎているため、幅広い技術を必要としている会社の中では、何が重要なのかを見極めるのが非常に難しいということもあります。

北海道のネットワーク

地元の一次プロバイダには、北海道大学、フェニックスクラブ、北海道ビジネスオートメーションがあります。さらに帯広シティケーブルというケーブルテレビ会社、北電のグループの北電情報テクノロジーがあり、それにHOTネットの6つしかありません。ネットワークのオペレーターはそれぞれに数人で、数としては充分ではありません。

IT技術者養成に必要なこと

スペシャリストの研修は、社外で研修を受けても実際の仕事で活かせないというケースがほとんどです。一方、ジェネラリストも、トータルソリューションに取り組む場合や顧客対応の際の営業技術などで必要ですが、現場の経験がなければできないため人材は多くありません。

スペシャリストにしろジェネラリストにしろ、それぞれが給料を取れる能力を身につけて欲しいと思います。企業にとって人材は宝ですから、「人財」とも書きます。人材を人財にするコーチングも必要だし、人財になろうとする努力も必要です。

学生の教育には、学生を指導する技術ではなく、学生と同じ目標に向かっていくという姿勢が必要だと思います。リーダーを作り出すためのリーダーシップとでもいいますか。魚の捕り方を教える教育ではなく、魚の動きを教えることで、魚だけではなく他の動物も捕れるようになるというような方法です。ティーチングよりコーチングが重要なのです。現代は、特に通信事業会社を取り巻く環境は、変化が激しくて明日のことが予想できません。たとえば、顧客を獲得してきて売上を上げても、料金の競争が起きると売上が減ります。では、次にどのように儲けるか。何でも決まったことだけをこなす人材ではなく、自ら判断し企画していける人財が必要だということです。

通信事業者の場合、回線サービスのことだけを教えるのではなく、変化は予想しにくいため、仕事の勉強の仕方、仕事への取り組み方を教える者が必要です。常に今までの延長線上で行くのではなく、明日どのような変化があっても対応できる能力を育てることが重要なのです。