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ILAカンファレンス2004
講演「教育分野における情報化の現状とe-Japan戦略」

文部科学省生涯学習政策局 参事官補佐 中西貴輝 氏

e-Japan戦略

教育の情報化だけではなく、日本全体を情報化していこうという大きな構想がe-Japan戦略です。2000年9月に当時の森首相が所信表明演説で「すべての国民が情報通信技術を活用できる日本型IT社会を実現する」と打ち上げたのが始まりです。当時は、世界各国でIT化が図られており、遅れてはいないが日本もいっそう推進しなくてはならない、行政部門だけではなく、教育や防災など日常生活に関わる分野までも包括的に情報化を推進しようということで描かれたのがe-Japan構想です。

e-Japan構想の目標

e-Japan構想はかなり高い目標を掲げていました。目標の1つだった「5年以内に世界最先端のIT国家となる」は、すでに達成されたと言っていいと思います。「高速で安価な通信網の整備や国家制度の確立」についても、さまざまな調査で、日本は一番安価に一番高速なネットを利用できるという評価を得ています。

インフラ面ではとても進んでいるが、教育の情報化は遅れているというのが日本の実態です。

具体的目標

e-Japan構想の目標は、国際競争力の強化、経済構造の改革、国民生活の利便化です。

2005年という期限だけではなく、かなり具体的な目標を掲げています。「2001年にすべての国民が安価にインターネットに常時接続することを可能にする」という目標は、2001年はともかくとして、現在ではほぼ達成されました。「2002年までに電子商取引の制度基盤と市場ルールを整備する」についても、電子マネーやカードなども普及し始めています。「2003年までに電子政府を実現する」も、市町村では電子申請ができるようになったところもあるし、中央政府でも電子化が進んでいます。

一番大変な目標は、このカンファレンスのテーマでもありますが、「2005年までに米国水準を上回るIT技術者の確保ができるように人材育成を強化する」という目標です。教育の情報化も、将来のIT人材に繋がるような人材育成が目的です。

「超高速アクセスが可能なインターネット網の整備」については、2000年当時の高速インターネットが400Kbpsであったことを考えると、 10Mbpsが一般的となっている現在は「超高速」のIN網が整備されたといえます。今後は光ファイバーの普及促進が課題となります。

IT戦略本部による戦略の具体化

構想は構想だけに終わることも多いのですが、情報化の構想に関しては、首相の所信表明からわずか2ヶ月後に、IT基本法が制定され、動き出しました。法律で設置を規定された内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は、非常に活発に活動し、e- Japan戦略、e-Japan戦略Ⅱ、戦略Ⅱ加速パッケージなど、具体的な戦略を打ち立てて来ました。さらに年度ごとに重点計画を策定しさまざまな計画が打ち出されています。

教育の情報化については、2004年度重点計画の重点政策5分野のひとつに「人材・教育」が位置付けられています。2006年度以降の布石にも「人材・教育」は入っています。ITのメリットを最大限活かした授業の実現、e-Learningの推進などが教育の情報化には含まれると思われます。また、情報モラル教育の充実も掲げられています。

遅れている教育の情報化

日本の教育の情報化は遅れている、というのが実態です。e -Japan重点計画に掲げられた教育の情報化の数値目標を見ると、2003年3月時点で普通教室のLAN整備率が29.2%です。PC教室ではない普通の教室でインターネットに接続されたPCが整備されている割合です。ITを利用して指導できる(インターネットから素材を取り寄せながら授業に使える)教員は52.8%。試験があるわけではなく自己申告ですから正確ではありませんが、半分くらいの教員しかITを利用する能力がないということです。高速インターネットがこれほど普及しているのに、学校の回線はいまだにモデムであるところが多いのも実態です。とくに大都市部での数字がよくありません。数値目標では2005年度にLAN整備率、ITを利用して指導できる教員、高速インターネット接続率とも100%としています。

教育情報化の予算

予算の面から見ると、文部省の予算が約1300億円です。さらに地方交付税交付金の公立学校のIT環境整備費が約2000億円あります。平成16年度にまでは右肩上がりで、地方交付税交付金の額としては例外的なものです。地方交付税措置にはPCだけではなくて、ソフトやインターネット接続費、校内LAN整備費、情報処理技術者の雇用費用も積算されています。

教育の情報化 各地の現状

全国の公立小中学校のPC整備状況を見ると、地域差が顕著であることが分かります。首都圏や近畿圏で整備が進んでいないのに対し、岩手や富山、岐阜、鳥取、高知は6人に1台の割合で整備されています。人口が多い地域は整備が難しいということです。e-Japanの目標は5.4人に1台ですから、単純に試算すると、あと90万台から100万台のPCの整備が必要です。PCで指導できる教員の率も都市部が悪く、地方に進んだ県が多いのが分かります。目標の100%は難しい状況です。

世界と比較しても普通教室のインターネット接続率はアメリカ92%、韓国100%で、かなり遅れているといえます。

教育情報化推進協議会

政府目標の達成に注意信号がともっているなか、どのような動きがあるかを紹介したいと思います。「情報化教育促進議員連盟」が決議をして、協議会を設けようという動きがありました。先日、地域における教育の情報化の推進を支援する「教育情報化推進協議会」が発足しました。構内LANの整備や教育委員会、教員対象の研修などを考えています。特に遅れている地域でセミナーや研修をやることになると思います。ぜひ、ご協力をお願いします。